投稿者:古賀 晄
AI(人工知能)を駆使して自然な言語を生成する機能「ChatGPT」は「人類に進化をもたらしたプロメテウスの火か、人類滅亡に導く悪魔のツールか」と議論が沸騰している。筆者にはこんな議論に首を突っ込む技量はないが、ジャーナリストとして記事やコラム、エッセイを書くのに役立つか試してみた。
ChatGPTはOpen AI社(米国)がAIを駆使して開発したチャットボット(Chatbot=対話とロボットの合成語)と呼ばれる対話型サービスだ。無料で使用できるChatGPT3.5(4は有料)は、1分もかからず自然な文体で例文が返ってくる。日本語の質問には日本語で回答してくれるからコラムの構成や下書きとしてなら十分手間が省ける。
Microsoft BingはChatGPTの文章生成機能を組み込んだ検索エンジンで、インターネット上の情報源から検索結果を組み合わせて回答を生成してくれる。対話だけでなく作成をクリックすると①プロフェッショナル②カジュアル③ニュースなど5つの執筆スタイル、形式も①段落②メール③ブログの投稿④アイデアを選択できる。こちらも文章の流れに不自然さは感じない。
ただAIが勘違いする場合もある。Bingで「福岡ペン倶楽部の紹介を200字程度で」と注文したら返ってきたのは筆記具の愛好者団体の紹介。質問を少し変えてみたら文学ファンの団体紹介だった。質問に「ジャーナリスト」など具体的なキーワードが必要だとわかり、「一般社団法人 福岡ペン倶楽部 ジャーナリスト 設立趣旨 役員名と会員数」を入力して生成されたのが次の内容だった。
《福岡ペン俱楽部は、福岡市中央区今泉にある一般社団法人です。設立趣旨は「地方の復権」と「ジャーナリズムの復権」です。2020年末に古くからの新聞記者仲間4人によって設立され、会員制の非営利団体として2021年4月から活動を開始しました。同倶楽部は毎月、連続講座を開講し、講演会、在九州海外公館の会見や交流会を行います1。役員の氏名と会員数については、検索結果からは明確な情報が得られませんでした。》(以下省略)
これは福岡ペン俱楽部ホームページを参考に生成された文章だと判断される。古い情報も混在しているが、ChatGPTとは違って文節ごとに出典や引用先の番号が振られているので、正誤の確認には便利だ。
こんな実験もしてみた。高名な歌人のプロフィルを書くよう求めたら、複数の同姓同名の経歴がごっちゃになっていた。歌人はよく知っている人だったから間違いに気づいたが、鵜呑みにすると「訂正とお詫び」ではすまない誤報を招く危うさもある。
事件報道などストレート記事なら取材した5W1Hをチャットボットに入力して回答を待つより最初から自分で原稿を書いた方が早いと思う。
どんなツールが登場してもジャーナリストの基本は「自分の足と頭で書け」ということだろう。(6月6日)