投稿者:古賀 晄

 能登半島地震の被災地支援ボランティア登録者数が1月20日時点で1万1500人、うち7割の8300人が県外からだ(石川県災害ボランティア情報特設サイト)。今からは被災者の生活支援とともに災害関連死を防ぐために医療・看護・福祉面でのボランティアの支援が重要になってくる。
 防災士の資格を持つ看護師の山中弓子さん(54)(神戸市)には、発災直後から災害支援の関係者からさまざまな相談や問い合わせが殺到、後方支援をしてきた。しかし、1人では対応しきれなくなった。「適切な支援を確実に届けるには情報の共有と一元化が重要」としてSNSの利用を思いつき、1月7日にFacebookのメッセンジャー機能を使ったグループサイト「R6能登半島地震」を立ち上げた(注:R6とは令和6年)。過去の災害支援でともに活動した仲間で中山さんが招待した人に限られるが、たちまち70人・団体を超えた。SNSによる災害に関するニセ情報の拡散が問題になっているが、このサイトメンバーは実名とプロフィルがわかるのでニセ情報が発信される可能性はまずない。
 SNSの利点は、刻々と変化する被災地状況についてリアルタイムでピンポイントの情報を発信できることだ。このサイトには、すでに現地入りした医師や看護師から「○○地区は看護支援者が足りない」とか「○○避難所は衛生管理が悪い。ケアが必要」など文字と音声、画像による報告がリアルタイムで届いている。今回の被災地は10以上の自治体に散在しているため、後続ボランティアはサイトで現況を調べたり先遣メンバーに質問したりして、どこで何が足りないか、自分のスキルはどこで役立つか、どこへ向かうべきかを判断している。
 山中さんは29年前の阪神淡路大震災で被災、同市東灘区の避難所で半年間、避難所支援と救護に携わった。看護師になったのは44歳の時。8年前の熊本地震で災害医療の取材中、仮設住宅の子どもたちの心のケアをしていた山中さんと出会った。2017年7月に九州北部豪雨災害が起きると、山中さんは被災地・朝倉市に駆け付け避難所での健康管理に1年間従事した。翌2018年7月には西日本豪雨で甚大な被害が出た岡山県倉敷市真備町に常駐して被災者に寄り添ってきた。各地での災害支援を通じて山中さんが大切にしているのは、官・民・学、多職種の連携と協働「つながり」と「誰も置き去りにしない覚悟」だという。
 山中さんは「災害支援看護には機動力があり独立して対応できる装備の必要性を感じた」と災害支援用「ナーシングカー(移動保健室)」を考案した。岡山市のレンタルカー会社に特注して大型キャンピングカーと小回りが利く軽キャンピングカーを災害看護仕様に改造してもらった。発災と同時に必要な資材を積んで現地に急行できる機動力と長期滞在可能な設備を備えており、大型車の方は避難所での臨時救護室や感染対策の隔離スペース、母子支援など被災現場で求められるたいていの看護が可能で、小型車は孤立被災者の巡回支援に当たる。
 いずれも災害時には、山中さんが借り出す契約をしている。今回が初出動だ。後方支援に手間取ったことなどから22日に現地入りとなったが、避難所の看護支援は長期にわたることから自立した支援に威力を発揮することだろう。(1月23日)

山中弓子看護師(2017年7月、朝倉市の避難所で)