投稿者:岸本 隆三

 東京電力(東電)は柏崎刈羽原子力発電所(新潟県柏崎市、刈羽村)6号機を1月21日再稼働したが、23日未明、停止した。核分裂を抑える制御棒を引き抜く作業中に異常を示す警報が鳴り、部品の交換などをしたが改善されないため制御棒を原子炉に戻し停止させたという。
 13年10か月ぶりの稼働で、2011年の福島第一原発事故を起こした東電が事故後に原発を再稼働させるのは初めてだった(読売新聞など)。東電は、原子力規制委員会から新規制基準をクリアし、さらにそれに上乗せする安全策をとったことや地元振興策などで信頼回復を図り、県知事の同意をとり付け、やっと再稼働に漕ぎつけた。それなのにいきなりのトラブルはいろいろな意味でショックだろう。ここは時間がかかってもいいからジックリそれを除去して、営業運転を始めたい。
 同原発を初めて眺め、近寄ったのは、一昨年(2024年)9月。新潟空港往復で糸魚川、能登半島旅行の時だ。レンタカーで同空港から能登半島に向かう時、戻る時に北陸自動車道の米山サービスエリアから何号機か分からないが、建屋を遠望した。もう少し近くで見たいと戻る時に、柏崎インターチェンジで同自動車道を降り、同原発をグルリと取り囲むようにして走る国道352号線に出て、北上した。
原発がある国道の左(北)側は砂丘の壁になっており、走っても、走っても壁が続くだけで建屋の影すら見えない。ずいぶん走ってから交差点があり左側奥にゲートが見えた。が、それだけ。また砂丘が続き、日本海が見えて原発そばを通り過ぎたことを自覚した。何分ではなく20分ぐらい走ったのかな。とにかく広いのだ。そしてこの広大な施設が眠っていると考えるともったいないと思った。
 福岡に帰って調べると、なんと敷地は420万平方㍍。東京ドーム90個分。縦1万㍍(10㌔㍍)と横420㍍の長方形の広さというほうがわかるかな。この敷地に実に7機の原発(出力計821万2000㌔㍗)があり、2機は廃炉が検討され、日本で出力が最も大きい135万6000㌔㍗の6、7号機が原子力規制委員会の新規制基準に合格、再稼働に向けて準備を進めていたようだ。
 当時すでに、ロシアのウクライナ侵攻からエネルギー安保、脱炭素社会への加速、さらに半導体工場立地やデーターセンター建設などでの電力需要の高まりから原発が見直されつつあった。九州電力では4機の原発が稼働しており、熊本県菊陽町への台湾積体電路製造(TSMC)の進出は豊富な地下水とともに安定した電力供給があるためともいわれた。
 24年7月には日本原子力発電の敦賀原子力発電所(福井県敦賀市)2号機が、原子力規制委員会から「原子炉建屋直下に将来動く可能性のある活断層の存在が否定できない」として新基準に適合せず、不合格となることが明らかになった。しかし、原発回帰は止まらず、10月には東北電力の女川原子力発電所(宮城県女川町、石巻市)2号機が2011年の東日本大震災後、東日本にある原発として初めて再稼働した。12月には、中国電力島根原子力発電所2号機(松江市)が再稼働。
 原発回帰は世界的潮流といわれ、政府はとうとう昨年2月、電力の安定供給と二酸化炭素(CO₂)の排出量削減を両立するため、それまで「可能な限り依存度を低減する」としていた原子力発電を「最大限活用する」との「エネルギー基本計画」を閣議決定し、大きく政策転換した。関西電力や九電は新原発の検討までしていると伝えられた。
 今年の年初には中部電力浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)3,4号機の安全審査で、原発の耐震設計の目安となる基準地震動のデータが意図的に操作されていたことが明らかになり、原子力規制委員会は1月26日中部電力本店(名古屋市)に立ち入り検査を始めた。相当ひどい不正行為だが、それでも原発回帰の流れは止まらない。
 総選挙を前に立憲民主党と公明両党は新党「中道改革連合」を結成、基本政策を同19日、発表した。立憲の綱領にある「原発ゼロ社会の1日も早い実現」については「将来的に原発に依存しない社会」を目指すとして、原発を容認した。この件についてはいろいろ議論の余地があるが、今は事実だけにとどめたい。いずれにせよ原発回帰だ。次は北海道電力の泊原子力発電所3号機(北海道泊村)などが控えている。
 ここまできたからこそ、頓挫している核燃料を再利用する「核燃料サイクル」の確立と再利用できなくなった核のごみ(高レベル放射性廃棄物)の立地推進が必要だ。いずれも確実に溜まり続けている。また同時に福島第一原発事故の除染作業で出た「除染土」の処分も進めなければならない。原発近くの中間貯蔵施設に1400万立方㍍(東京ドーム11杯分)が保管されており、2045年までに福島県外で処分することが法律で決まっている。
 このうち4分の1は放射線量がやや高いため、処分場に埋設することが決まっているが、候補地すら上がっていない。4分の3は放射線量が低く、全国で道路工事や土地造成に使うと想定しているが、住民の反対で進んでいない。政府は作夏から中央省庁の花壇などに象徴的に使った。ここは首都圏など東京電力管内の住民、自治体が積極的に使用すべきだろう。それが福島県は東北電力管内で、福島第一原発の電力は首都圏に送られてきたことへの少ないお返しになるのではないか。安全な除染土を使用することに何の問題があるのか。そうすれば、全国の自治体も追随しないだろうか。
 新潟県も東北電力管内であり、柏崎刈羽原発で作られた電気は首都圏に送られ、また今後も送られる予定だ。地元には「首都圏のために、なんで」との声もあるという。原発からの送電を受け続けるためにも必要ではないのか。同原発が営業運転を始める前に首都圏の人たちに特に考えてほしい。(2月2日)