投稿者:岸本 隆三
トランプ米大統領の就任前からの数々の発言、就任後の大統領令連発には驚くことばかりだ。一つひとつが相当議論しなければいけない問題だが、次から次に新手が出て来るから議論も深まらない様相だ。一番驚いたのはロシアのウクライナ侵略で、会談したウクライナのゼレンスキー大統領を恫喝、ウクライナ支援を一時停止したことだろう。テレビのニュースを見ていて怒りが収まらなかった。自由主義、人権と民主主義を主導してきた米国、米大統領のイメージはない。
就任前からデンマーク領・グリーンランド領有に意欲を見せ、パナマ運河の奪還、さらに隣国・カナダは米国の51番目の州になるべきだとも発言、その帝国主義的な体質はロシアのプーチン大統領、中国の習近平主席に近いのではないかとも思ってしまう。
「カナダを51番目の州に」発言を聞いて、何年か前、どういう文脈だったか忘れてしまったが、金正恩朝鮮労働党総書記が「日本はアメリカの51番目の州か準州だ」と日本は米国の属国のようだと揶揄していた。そして「そうかもな」と妙に納得するところもあったのを思い出した。
それは日本の防衛はもちろん自衛隊もあるのだが、米国の核の傘と在日米軍によっているからだ。そのため沖縄県の総面積の8%を、嘉手納基地をはじめ米軍基地が占め、首都・東京のすぐ近くの横須賀基地は原子力空母が寄港するのではなく母港としている。さらに横田、厚木基地もあり首都の空域は米軍がいまだに握っているという。
九州では長崎県佐世保市に米海軍基地がある。同市に、現役の読売新聞時代に2年間勤務、いまも年に数回訪れる。旧日本海軍以来の一部の地域と港湾は米軍管理だ。金網の向こうはもちろん日本領なのだが、そうは見えない。近くの米軍幹部用の住宅は高いコンクリートの高台となり、まるで要塞のようだ。街の中心部を貫通して基地近くにインターチェンジがある西九州道はバイパスで大きな米軍住宅につながっている。中心部の高架工事は工事費が高すぎるとの批判もあったが、今は4車線化工事が進んでいる。
首都の近くが原子力空母の母港とあわせ、51番目の州や準州に見えるところなのかなーと思う。反面、基地提供の外に2000億円を超える思いやり予算や基地周辺整備などに相当な予算をつぎ込んでいる。独立国でなければ、できないことだ。
それなのにトランプ大統領は「我々は日本を守らなければならないが、日本は我々を守る必要がない」と日米安全保障条約への不満を表明している。なかなか本気のようで、10日の読売新聞には思いやり予算の増額を求めるジョージ・グラス氏を駐日大使、日本の防衛費を少なくとも国内総生産(GDP)比3%への引き上げを主張するエルブリッジ・コルビー氏を国防次官にする人事を米上院が承認したと伝えている。石破首相は「日本は米国に基地を提供する義務を負っている。一方的に守っている関係ではない」と正論を述べている。そうだと思い応援しているが、相手が相手だけに、負担は増えそうだ。
権威的なロシア、中国、そして北朝鮮と接しており日本はすでに防衛費を含む安全保障関連費を国内総生産(GDP)比2%に引き上げる方針を決めている。さらに米軍との連携強化をはかるため統合作戦司令部を創設するなどそれなりにやっているところでの要求だ。
もちろん日米安保条約が日本の戦後の平和に大きく寄与したことを認め、評価している。それでも米政権が代わると「尖閣諸島は日米安保条約適用なのか」とたださなければならないのは、どうなのかとも思う。同じ国費を投入するなら自衛隊は米軍の補完ではなく、在日米軍が撤退しても周辺諸国から侵略させない自衛隊に増強する道を踏み出すときではないのかと考える。防衛費の増額は変わらず、やっぱりトランプ大統領の思う壺なのかな。(4月10日)