投稿者:岸本 隆三
パリ五輪体操女子代表主将の宮田笙子選手(19)(順天堂大)が喫煙と飲酒で日本体操協会の代表行動規範に反するとして代表を辞退させられた(体操協会は辞退した)のには、驚いた。宮田選手が喫煙、飲酒していたと聞いても驚かないが、それで五輪の代表を辞退しなければならないとなると「ちょっと待ってくれ」と言いたくなる。
殺人、強盗、放火、窃盗などの刑法犯でもなく、また覚せい剤取締法違反などの麻薬事件でもなく、たかが喫煙に飲酒ではないか。それが子供のころから10数年にわたり練習を積み重ねて勝ち取った最高の栄誉である五輪代表の座を降りなければならないことなのか。これからまだ花も実ある19歳の若者に対する処置なのか。自分の胸に手を当てて思い出してほしい。18、19歳の時にはいろいろ恥ずかしいこともあっただろう。喫煙、飲酒は多くがそのころまでに体験しただろう。日本はいつから息苦しい四角四面の聖人君子の国になったのか。
体操協会の行動規範は違法行為の禁止(20歳未満の喫煙、飲酒は違法であることに間違いはない)に加え、20歳以上でも代表活動中の喫煙と飲酒は原則として禁じているという。初めて知ったが、これもどうかしている。問題が別なのでひとまず置いておく。
喫煙、飲酒は時代、地域、環境によって考え方は異なる。私は田舎の漁村の生まれだ。もちろん法ではたばこも酒も20歳からだったが、酒は正月、お盆、祭礼の時は中学生の時から少し飲んでいた。高校は田舎を出て、下宿していた。下宿生はどうも不良が多いと教師が思い込んでおり、今思えば、人権を無視して(笑)夜、突然、「岸本居るか」と下宿を襲って来ていた。金もなく、下宿では飲まなかった。田舎に帰ると漁師をしていた同級生がガバガバ飲むので、たまに付き合って、足腰が立たないこともあった。
たばこは高校の卒業式が終わった後の大学受験時だったと思う。校則は関係なくなっていたが、まだ18歳でもちろん違法だ。入学後はいっぱしのたばこのみ、喫煙者になっていた。もちろん酒も。まだ20歳前。多くの男子学生がそうだった。女子学生も少なからずいた。喫煙する女子大生はなんとなく格好良く見えたものだ。
新聞記者になって数年後、離島の高校生グループが運動会の打ち上げで飲酒して補導される事案があり、長崎県警も広報していた。「酒ぐらい飲むなー」と思って原稿にしなかったら各紙に掲載されている。デスクが「お前は知らなかったのか」と県警のクラブに電話があったので「私も飲んでいたので。たいしたことはありません」とこたえたら、随分怒られた。今はどうかな。補導はされないのではないか。世間の高校生らに対する喫煙、飲酒はさらにゆるくなっているのではないか。
ところがスポーツ紙やネットを見ると「やってはいけない行為だ。当然だ」「やむをえない」など辞退を肯定的にとらえる意見、見方もすくなくないのだ。少し信じられないが、個人的な体験を書き連ねたのは喫煙、飲酒違反はたいしたことはないのだ、と彼らに分かってほしいためだが。別に勧めている訳ではない。辞退がひどいといっているのだ。
高校の時、喫煙、飲酒が発覚した者で退学者はいなかったように思う。ほとんど「謹慎」だった。登校せず。家で反省文を書くのだ。
日本体操協会も内部通報まであっては何らかの措置を取らなければならなかったのは分かる。そう。数日の謹慎にして練習させず、反省文を書かせたらと思った。もう遅いかな。(7月22日)