投稿者:岸本 隆三

 3連休のど真ん中の7月14日(日曜日)朝、世界を震撼させるニュースが飛び込んできた。米国のトランプ前大統領銃撃事件だ。
 この日は午前5時過ぎに起き、五島列島で線状降水帯が発生するなど大雨が降っており、長崎県佐世保市に行く用事もあったから、NHKのニュースを見ていた。7時20分過ぎだったのか。メモしていないので、正確には分らない。トランプ氏が銃撃されたとの速報のテロップが流れ、間をおかず画も流れた。何回か流れたと思う。その何回目かに、アナウンサーが「トランプ氏は耳付近から血を流しており、拳を上げた」など言っているのだが、車に乗る前にその様子が少し見えるだけだ。
 民放にチャンネルを回すと撃たれた後、演台から立ちあがり右耳から血が流れ、ほほも血が付着していながら激しく右拳を突き上げるトランプ氏がはっきり見える。そしてその後、警護員に抱えられるようにして車に乗り込んでいる。NHKの7時台のニュースは銃撃直後の画がカットされていたのだ。銃撃で負傷しても負けない力強さを感じる場面なのだ。私は支持者でもなんでもないがトランプ氏はすごいし、やるなーと感嘆した。あの場面でなかなかできることではないだろう。
 それがカットされているのだ。NHKは緊急の時にもカットする余裕があるのだ、と思ったと同時になぜなのかと考えた。とっさに血を見せてはいけないと思ってカットしたのかな。近頃はリアルな画は出さず、やたら加工した画が多くはないか。それを踏襲したのかな。それとも他に理由があるのか。分らない。後では直後の画からが流れていた。
 そして高齢者なので、ケネディ大統領暗殺事件を思い出した。あれも休みの朝ではなかったか、と。早朝、初めての宇宙(衛星)中継だったのに、流れたのはケネディ暗殺だった。ウキペディアで調べてみると1963年11月22日(金曜日)午後0時30分(現地時間)の発生。日本は11月23日(土曜日)にニュースが飛び込んできたが、当時は週休2日ではなく、土曜日は半ドン。勤労感謝の日で祝日だったので、休みとの記憶があったのか。私は一報を見たと思っていたが、その午前中にそれを録画したニュースを見たのかもしれない。小学6年だった。犯人として逮捕されたオズワルドは2日後、移送中の警察署内で暗殺され、その犯人も4年後獄中死している。60年以上たつのにオズワルドの単独犯だったのか、動機も背景も分からない。この暗殺事件でオズワルドは教科書倉庫ビル6階から撃ったとされており、以後ビル等は警戒されてきたが、今回はどうして近くの屋上が警戒されていなかったのか。
 2022年7月、安倍晋三元首相が奈良市内で街頭演説中に銃撃され、死亡した。日本は秀吉の刀狩りの伝統と厳しい銃規制で銃撃事件は少ない。安倍元首相の時は本人が伏せるのも警護員が安倍元首相をかばうのも遅かった印象を受けた。今回、トランプ氏が伏せるのも米映画「ボディーガード」に出て来るようなサングラスにスーツ姿の警護員がトランプ氏をかばうのも早かったように感じた。
 発砲、銃撃事件は暴力団関係を中心に何十件と取材している。しかし銃撃を現認したのは1回だけだ。1977年10月、長崎県内で起きたバスジャック事件。10月14日、平戸発佐世保経由長崎駅行きの西肥バスを大村市内で男2人が運転手、乗客ごと奪い、長崎駅近くの長崎市茂里町のガソリンスタンドに停車した。犯人は爆発物を所持しているといわれ、一部の人質を解放するなどして日付が変わった15日午前4時25分、爆発音と同時に警察隊が突入、「パン、パン、パン」と乾いた音がした。警察官が撃ったのだ。主犯格の男を射殺して人質15人はけがもなく救出された。取材で、私もバスを取り巻いていた1人だった。隣は読売新聞福岡総局(当時)から応援に駆け付けたベテランカメランのEさん。彼は爆発音と同時に飛び出し「早く出過ぎた」と言いながら、救出直後の女性のアップ写真をものにし、社会面に大きく掲載された。私は足がすくみ出遅れた。どんな写真を撮ったのか。多分紙面にはなっていないはずだ。あんなに勇敢だったEさんもがんに命を取られてずいぶん経つ。
 トランプ氏の銃撃でもカメランが演台に寄って行くのも早かった。そして15日の読売新聞やスポーツ報知に掲載されたAP配信の写真。青空にゆったりとはためく星条旗を背景に、警護員に囲まれながらも血を流しながら右拳を突き上げるトランプ氏の1枚だ。作ってもこうはいくまい。
 米映画「父親たちの星条旗」で知られる太平洋戦争末期の1945年2月23日、米兵士が硫黄島擂鉢山山頂に(2つ目の)星条旗を打ち立てる有名な写真を思い出した。
トランプ氏支持者にとってはこたえられない1枚であると同時に歴史に残る1枚だ。(7月17日)