投稿者:岸本 隆三
日本漢字能力検定協会の公募による今年の漢字は「税」と決まった。消費税が引き上げられた2014年以来2度目だという。岸田首相が選挙狙いに見える所得税の定額減税を打ち出したが、防衛費増額などの増税が控えていることもあり不評だったのも選定に影響したのか。私はかつて漢文で習った「朝三暮四」を思い出してしまった。本当に猿ではないぞ、と。かえって、支持率が下がり解散総選挙ができなくなった。さらに自民党安倍派による政治資金パーティー収入の裏金化疑惑で、解散どころか政権が持たないかもしれない。
安倍派大幹部の大臣は「政府として答えるのは差し控える」、党幹部は「捜査中」など説明せず、逃げの一手。キックバックが裏付けられても「会計責任者に任せていた」などと弁明する前段階かもしれない。岸田首相は自身の派閥離脱やパーティー開催自粛など問題をそらしている。政治資金として金を集めながら、裏金化して私腹を肥やしていたかもしれないとなると、政治資金規正法違反(不記載、虚偽記入)だけではなく、ほとんど詐欺罪だ。
前置きが長くなり、話がそれた。沖縄県与那国島観光では岩場に幅約3㍍、深さ約7㍍の割れ目の「久部良バリ」も見学した。人頭税(にんとうぜい)で人口調整のため妊婦を跳ばせ、結果的に堕胎したり、転落死したりしたとの伝承がある。そういうことがあったかもしれないが、人頭税制下では無理があるという(沖縄大百科事典)。似たようなのに、「トゥング田」がある。「人舛田」とも言われ、伝承では人頭税の重圧から逃れるため、15-50歳までの男子をこの場所に非常招集し、遅れてその田に入れなかったものを惨殺したという(同)。町の人に聞き、探したが、看板もなく結局、分らなかった。伝説、伝承があるほど人頭税はひどかったのだ。
沖縄大百科事典などによると、琉球は1609年(慶長14)の薩摩侵入の後の1637年(寛永17)から宮古・八重山の先島に人頭に対して賦課した。15歳から50歳まで年齢別に4つに分け米、粟、女子では麻織物(上布)などを納付させられた。島々に派遣された役人の収奪もあり、苛斂誅求は島民を苦しめ、赤子の圧殺、堕胎などの「間引き」なども行われたという。明治になって琉球処分後も続き、住民の政府への直接的な運動でやっと1903年(明治36)、廃止となった。
与那国島は今や国防の最前線である。多くの先島の離島も含め有事の際の住民避難などは計画がまだ緒についたばかりだ。スピードアップが求められるとともに物量の確保も必要だ。場合によってはシェルター整備も急がなければならない。しかしそれだけでは足りない。
小さな離島は物価が高い上、高校もなく高校進学は下宿代、あるいは寮費などの出費を強いられる。観光の島はほんの一部であり、多くの離島で、漁業など第一次産業が不振では収入も減り、他からの収入はなかなか難しく、過疎化が進む離島が多い。人がいることが国防の第一歩だろう。与那国島では自衛隊駐屯地の開設でやっと過疎化に歯止めがかかった状態だが、このまま維持できるかどうか。
沖縄振興特別措置法などで各種補助金、交付金でいろいろな施策が取られているようだが、人頭税で考えた。
小さな国境有人島には「国土防衛に貢献している」と、逆人頭税として、住民1人1人に一定金額を交付したらどうだろうか。新型コロナ禍で直接交付はする方もされる方も経験済みだ。(12月15日)
(写真・いずれも沖縄・与那国島で)