「中村研一・琢二生家美術館見学&そばの会」を11月18日(土曜日)、宗像市原町159の同美術館で開いた。自宅を美術館とし館長を務め福岡ペン倶楽部会員でもある中村嘉彦さん(82)のご厚意で実現した。
 会員やその関係者13人がバスや車で午前11時には集まった。最初に驚くのは邸内にそびえ裏庭を覆うクスの大木。樹齢500年以上という。この日は風が強く、枝葉がいっぱい庭に落ちていた。清掃が大変だ。「江戸時代の地区の地図にも描かれている。これでも家屋にかかっていた枝を切ったんですよ」と嘉彦さん。
 日本家屋がまた立派なのだ。漆喰の白壁に黒瓦。文化財級だ。江戸時代初期からの庄屋。明治40年(1907)に研一・琢二の父で嘉彦さんの祖父でもある中村啓二郎(住友本社技師長)が建てた。玄関を入って仏間に。クロマツの梁は今の梁の何倍だろうか。その厚さに驚いていると嘉彦さんが「大黒柱はモミジ(カエデ)です。真っ直ぐなものは少ないようです」と説明してくれた。歴史を感じさせる仏壇の横に「祖母トミの肖像」が掲げられている。さらに「魚(うお)釣り」など。「仏壇のある美術館」と言う人もいるという。仏間の他いずれも畳敷きの3、4部屋に作品を架けたり、畳に置いたり、説明板もほとんどなく、展示というよりたまたま今ここに置いているとう感じだ。
 研一が愛用した木製キャビネット、木製テーブルも備品のようにあるが、これは親交が深かった藤田嗣治が作品に描いているという。他にも愛用のパイプ、川端康成の手紙など、考えたら絵画以外にもお宝がいっぱいなのだ。
 見学の後はそば。嘉彦さんが得意の手打ちそばを披露する予定だったが、肩を痛めて、これは中止。代わりに近くのそば店からざるそばを出前してもらって仏間横の洋間で解説の付いた昼食会。そばといえば、何とかで。嘉彦さんが地酒を用意、また持ち込んだ参加者もいて、ワイワイ、ガブガブ。恐縮にもご家族が野菜、エビなどの天ぷらなどを出してくれてさらに盛り上がった。
 忘れていた。美術館の南側の道は唐津街道だ。他にも歴史ある日本家屋が少なくなく、酔い覚ましでもないのだが、色づき始めた庭木を眺めながら歩いた。短い秋を楽しんだ1日だった。中村さんとご家族の皆さんお世話になりました。ありがとうございました。
                          (報告・岸本隆三)