投稿者:古賀 晄
文部科学省は2024年8月、公立小中学校の教員約7700人増員や新人教員の授業を2割減らすなどの教育現場の働き方改革案を文部科学大臣に提出した。2019年にも教員の働き方改革を打ち出したが、過酷な労働環境は改善されず、教員のなり手不足が深刻化している。
Facebookの「友達」である現職教師に匿名を条件にナマの声を聴いてみた。紹介したコメントは教師の意見すべてを代表するものではないことを最初にお断りしておく。
福岡県の公立中学校で数学教師Hさん(39、男性)は教師歴16年のベテラン。クラス担任をしており「働き方改革が何度も叫ばれたが改善の実感がない。授業以外の雑務と研修や会議に追われる日々で生徒と向き合う時間すらない。部活動顧問もしており対外試合で休日も満足に休めない。テストの採点や授業準備で寝るのは深夜零時を回る」と過酷な現状を吐露した。
《文科省が2022年度に実施した公立学校教員の勤務実態調査では、国の指針「月45時間」を超える時間外勤務(残業)は小学校教員で64・5%、中学校教員は77・1%に上った。国が示す「過労死ライン」(残業月80時間)にも、それぞれ14・2%、36・6%が該当した(2023年4月28日付読売オンライン)》
同県公立中学校の英語教師4年目のS子さん(25、女性)は「登下校見守りや校内清掃の監督など『これ、教師がやるべき仕事?』と首をかしげる。コロナ禍でオンライン授業は一気に加速したけれど、教師は出勤っておかしくないですか。一般企業で働く同期生は在宅テレワークの働き方が定着している。教育現場は遅れています。民間企業に転職しようかな」。
《福岡市教育委員会は2025年度から小学校の水泳の授業を民間のスイミングクラブなどに委託する。校内プールの水質管理や維持管理、事故防止などが教師の重荷になっていた。委託費は直営のほぼ半額で済むそうだ。また、静岡県富士市には地域社会と連携したふれいあい協力員制度があり、地域住民が小中学校の雑事を担当し学校運営を支援している》
同県北部の公立小学校教師歴10年のM子さん(34、女性)が最も頭が痛めるのは保護者からのクレームという。ほぼ毎日、いいがかりとしか思えないクレームの電話がある。例えば「うちの子が勉強しないのも夜遊びも教師のせい」などと言いつのり、「上司は誰も取り合ってくれない。同僚は精神を病んで休職中。私も心が折れそう」と。
《2022年度に精神疾患で休職した教員は6539人、そのうち19.4%が退職、休職1年以上が31.7%=2023年12月の文科省調査より抜粋》
文科省は、教員の増員のほか時間外手当(「給特法」)を本給の13%(現行4%)への引き上げなどを軸に教員の労働環境の改善を進めるとしている。具体的にはスクールカウンセラー(心理の専門職)やいじめ・虐待などに対応するスクールソーシャルワーカー、教員業務支援員や部活動支援員などさまざまな専門スタッフが参加する「多様な専門性を有する質の高い教職員集団」の構築を掲げて教員のなり手不足の解消にもつなげたい意向だ。今度こそ、文科省の本気度が試されている。(9月27日)