投稿者:上原 幸則

 田んぼに変化が。昨年まで耕作放棄されていたところ(鹿児島)が整地され、田植えの準備が進んでいる。関東にいる姪が急に愛想良くなった。スーパーの棚からコメが消えたと聞いて、送ってあげたからだろう。
 家庭菜園に毛が生えた程度の米作りを鹿児島でしている小農。小農学会のシンポジウムが先月、福岡大学であり初めて参加した。小農学会は、萬田正治さん(元鹿児島大学副学長)や山下惣一さん(農民作家、2022年死去)らが中心となり、2015年に福岡市で設立された。産業としての農業と、暮らしとしての農業を複眼的に捉え、農的暮らし、定年帰農、半農半Xなどをキーワドに、小農を推奨。小農は国民の食糧安全保障にも大事で、様々な人たちが食や農に関わる必要があると呼びかけてきた。 
 テーマは「もうすぐ農家がいなくなる!あなたならどうする」。基調講演で元福岡県農業大学長は「大卒初任給はこの50年で6倍になったが、生産者米価は2倍ほど。コメの小売価格高騰を言われているが、やっと他の物価上昇率に並んだだけ。農業従事者の減少は急速で75歳以上が3割、60歳以上で8割を占めている。減り続けると、(農家も)コメではメシが食えなくなる」と深刻な状況を語った。
 朝倉市で水田10ヘクタールを耕す農業歴20年の男性は「農業機械に数千万円。修理も100万円単位。大規模化を目指し、12ヘクタールに増やした年もあったが手が回らなくなった。定年になった人に帰農を勧めてもなり手がいない。農じまいも目につく」。
 糸島市の中山間地で棚田を耕作する男性は「仲間のほとんどは70歳代。水路整備など共同作業がつらい、イノシシ被害もある。それでも棚田のある風景は特別で、景観は輸入できない。都市部の人も棚田にひかれて農作業に参加してくれるようになり、井原山田縁プロジェクトとして定着した。住民同士が交流、力を合わせる米作りに希望が見えている」と報告した。
 福島県などから160人が参加した会場からは「消費者の金が直接、生産者に届くよう流通を考える必要がある」。混迷の農政に「自分で食べるだけのコメを作り、残った土地は放棄する」と過激な発言もあったが、食を守っていくため、総人口の99%を占める消費者が農業に関心を持つよう、かかりつけ農家制度が提案され、まとめとなった。
 ワイドショーのコメンテーターが、小規模の農地を集約化して大規模経営で、コメの輸出につなげるとよいと発言していたが、集約化できる土地は、ほ場整備済みだ。棚田など小さなところは残っており、維持することが景観、環境の保全につながっている。スマートでなく手間のかかる農業にも価値がある。
 報道によると、25年産コメはJAの概算金(農家への前払い金)が上がり、小売価格の高騰は続きそうとのこと。農家の平均年齢69歳をちょっと?超え、小農では出荷して利益を得るのは無理だが、福岡おにぎりの会に毎年届けている炊き出し用のコメは今秋も絶やさないようにしよう。(5月12日)