投稿者:古賀 晄

 「子ども食堂」のことを知りたいと、福岡新生キリスト教会(福岡市南区三宅3丁目)を会場にしている「ハレルヤ食堂」を訪ねた。教会は場所を提供しているだけで運営には関与していないので、宗教色はない普通の「子ども食堂」である。
 開催は毎月木曜日の午後3時半から。第1、第3は250食、第2、第4は70食を提供する。予約して弁当箱を持参すると大人は1食分150円(子どもは100円)で夕食を詰めてくれる仕組みだ。
 “開店”と同時に幼児を連れた若い母親やパート帰りの主婦、お年寄りが集まってきた。「子ども食堂のはずだが?」と代表の川本美鶴さん(62)に尋ねた。「就学児は夕方から増えます。困っているのは子どもに限りませんから、『来る者は拒まず』でやっています」と。利用者は大人が6割、子ども4割だとか。
 キッチンでは10人ほどのスタッフがご飯を炊き、手作りの副菜を手際よく弁当箱に詰めている。通路には支援団体や企業が無償提供した白米や缶詰、即席麺などの食料品、台所用品が山積みだ。無償なので10㎏のコメ袋を抱えて喜んで帰る主婦も多い。幾組かの若い母親と幼児が広間に集まって食事会が始まった。
 夕方、やって来た小中学生が合流。広間で温かい食事を食べながらおしゃべりや幼い子の遊び相手、ボランティアの学生に宿題を見てもらう姿もある。「居心地のよい団らん」が、ここには確かにある。
 ボランティアは現在17人。83歳の男性、元教師や主婦、女子高校生と多彩だが、多くはキリスト教徒ではない一般市民だ。自主的に役割分担を決め、雑用もいとわない。「人の役に立つ喜び」で連帯している心意気が伝わって来た。
 川本さんら信徒3人で「子ども食堂」を立ち上げたのは2016年9月。日曜学校に来る小学生の男児が家庭環境に恵まれず健康状態が悪いのに気づき、「一緒にご飯を食べる居場所があれば」と思ったのがきっかけだった。設立資金は福岡市の助成金を申請し、不足分は手出しでスタートした。
 当初の利用者は子ども6人を含め13人ほどで、広間に集まって食事をする形が長らく続いていた。子どもだけでなく誰でも恩恵を受けられると口コミで広がって、広間での団らんは賑わい、食材を無償提供してくれる企業やボランティアスタッフも増えて運営は軌道に乗った。
 だがコロナ禍で事態が一変した。感染防止のため広間の利用をやめ、弁当持ち帰りに切り替えて病人のいる家庭への配達も始めた。ところが3年余のコロナ禍が明けてもこの形式が定着して、弁当を受け取ると帰ってしまう利用者が多いとか。
 NPO「全国こども食堂支援センター・むすびえ」によると、子ども食堂は全国に7331か所(福岡県は281か所)ある。貧困家庭の子どもに限らず母子家庭や孤食の独居高齢者など誰にでも扉を開いている所が増えているようだ。
 川本さんの言葉「来る者は拒まず」は、多くの「子ども食堂」の現在形を象徴しているように感じた。(11月7日)