一般会員で元熊本農高校長、元東海大農学部特任教授の片岡正実さんが今月(8月)、エッセイ集「君は1896年に出会ったか―人はなぜ学ぶのか?教え子と共に過ごした“気づき”の時間と教壇からのメッセージ」(熊日出版、税別1300円)を出版した。
片岡さんは熊本市生まれで、熊本大大学院修士課程修了後、高校教諭に。濟々黌高など4校で世界史を教え、八代高校教頭を経て、南稜高校、熊本農高校長。退職後東海大農学部特任教授、非常勤講師をそれぞれ5年間務めた。
教壇でのエピソードを中心に、高校入学式や創立記念日の式辞、著者の幼少時のできごと、世間に呼びかけている米食のすすめなど42編を収録している。高校教師のエッセイだからかたぐるしいのではと思うかもしれないが、そういうことはなく面白くて興味深いのだ。 「いつでも夢を」編では、南稜、熊本農両校長の時代には生徒にそれぞれの夢を思い描くひと時にしてほしいと毎日昼休みに橋幸夫と吉永小百合のヒット曲「いつでも夢を」を校内放送で流した。当時の生徒は校歌より「いつでも夢を」覚えていたという(笑)。公務員試験対策などで独自に奮闘する著者とそれについていく生徒のエピソードなど心温まるものも少なくない。「楽しくなければ学校じゃない」をスローガンに掲げて取り組んでおり、高校教師もいいなー、またこういう教師だったら教え子になりたいなーと思わせる。
「飯米救国―いつでもコメを―」編では太平洋戦争の戦死者の半ばは終戦直前の半年間に集中し、その8割以上が餓死であった。にもかかわらず、政府も国民も、先人の壮絶な飢餓体験に学ばず、いまや食料自給率はカロリーベースで38%だ。我が国で唯一100%自給可能な穀物は米である。その消費が落ち込んでおり、もう1杯の米飯を食べることが国を救うと訴える。
ときたま出て来る自作の川柳や短歌がまた、楽しい。その川柳の一つ。「プーチンと巣穴は同じネタニヤフ」(岸本隆三)