投稿者:大矢 雅弘

 国立国会図書館が5月から、絶版になった書籍など入手が難しい資料を電子データ(PDF)の形でスマートフォンやタブレット端末、パソコンから閲覧できるサービスを始めた。図書館の開館時間や居住地に左右されず、情報をより簡単に取得できるデジタル化資料へのニーズは今後、さらに高まるに違いない。
 国立国会図書館所蔵の資料でデジタル化された資料は約281万点。このうち、絶版になった書籍など約152万点の入手困難資料はこれまで、同館や公立図書館などにある端末で閲覧できる仕組みだった。今回、事前に国会図書館の利用者登録をすれば、利用者個人がインターネットで「国立国会図書館デジタルコレクション」のサイトにアクセスし、閲覧できるようになった。
 ただ、全国から発信される反戦・平和や反核、人権など、多種多様な活動を記録した草の根のミニコミ誌は、国立国会図書館をはじめ、公立図書館で所蔵されていないケースが多い。また発行部数も少ないため、散逸しがちだ。そんなミニコミ誌に光をあて、NPOやNGO、市民グループが発行した膨大な資料を収集したのが、丸山尚さんを中心に1976年に設立された住民図書館(東京都杉並区)だ。
 住民図書館は四半世紀にわたり、全国のミニコミ誌を収集・保存してきたが、2001年12月に廃館。所蔵資料は埼玉大学共生社会研究センターに引き継がれ、その後、2010年4月から立教大学共生社会研究センターに引き継がれている。
 同センターでは、住民図書館から引き継がれた資料にとどまらず、作家の小田実さんらが呼びかけ、日本の市民活動の始まりとなった「ベトナムに平和を!市民連合(ベ平連)」の資料なども保管、公開されている。資料の整理・入力が済んだものはタイトルなどから検索可能だが、資料の中身全体の電子データ化までには至っていない。
 それだけに、女性の情報発信や活動支援をする認定NPO法人「ウィメンズアクションネットワーク(WAN)」が2013年5月、ホームページ(http://wan.or.jp/)上に開設した「ミニコミ図書館」の先駆的な取り組みには目を見張った。
 「第2波フェミニズムが日本に誕生して40年余、この間、多くの苦労とそれに匹敵する喜びを刻んできたミニコミですが、その中からも終刊、休刊が相次ぐようになりました。多くの場合、その記録を保存する組織や機関がないまま、散逸する危険が高いのは大変に残念なことではないでしょうか」。WAN理事長で東京大学名誉教授の上野千鶴子さんは図書館開設の趣意書で記している。
 収録しているミニコミ誌は約120タイトル、約5000冊にのぼる。たとえば、ウーマンリブやフェミニズムといった言葉もほとんど知られていなかった1960年代から約40年間、女性問題についての研究を続けてきた「日本婦人問題懇話会」の会報は、第1号から最終号の59号までを掲載している。これらのミニコミ誌のすべては電子データ化され、だれでも無料で閲覧し、ダウンロードできる。
 資料の電子データ化は全国の市町村でも積極的に行われるようになってきた。草の根のミニコミ誌も、著作権をどう保護していくのかにも配慮しながら、貴重な歴史的資料として次世代に伝えたい。(6月16日)