投稿者:古賀 晄

 自然災害は地域の分断と被災者の孤立を生む。
 熊本地震(2016年4月)の際に災害医療シリーズを医療専門誌に書いた。益城町テクノ仮設団地(516戸)にはピーク時1334人の被災者が暮らしていて、「全国訪問ボランティアナースの会キャンナス熊本」が孤立しがちな入居者を見守り、キリスト教の教派を超えたNPO「九州キリスト災害支援センター(九キ災)」は被災地の子どもを見守る活動を続けていた。 
 この取材の過程で東日本大震災(2011年3月11日)の被災地、福島県南相馬市では、子どもたちの心のケアに取り組む国際NGO日本組織「オペレーション・ブレッシング・ジャパン(OBJ)」(本部・宮城県)の存在を知った。
 熊本地震以後も九州北部豪雨(2017年7月5日、福岡、大分両県で死者行方不明者42人)、西日本豪雨(2018年7月、広島、岡山、愛媛県などに甚大な被害)などが相次いだ。ボランティアの活躍は被災自治体にとって大きな戦力となったのは間違いない。
 しかし熊本県南部に甚大な被害をもたらした「2020年7月豪雨」では状況が一変した。さきの熊本地震では350団体が駆けつけたが、この時はほとんど県内の災害ボランティアだけに限定せざるを得ない事態になった。コロナ禍が急拡大した最中だったからだ。
 現地スタッフを県外から遠隔支援するしかなかったOBJの弓削恵則災害支援担当は「不慣れな災害対応によって至るところで支援が滞り、助けが来ない被災者を思うと胸が痛んだ。 そもそも災害復旧に当たる一般ボランティアと被災者支援の専門団体は別物なのにマスメディアにもそれが理解されていない」と忸怩たる思いを語った。
 災害支援団体では感染症対策の規範を作り十分な対策をした上で、コロナ禍でも団体独自の判断で外部から被災地に入ることを確認し合った。それが試される事態が起きた。
 翌2021年7月、静岡県熱海市の土石流災害である。
静岡県は県東部のボランティアしか受け付けない方針を打ち出したため、3000人以上のボランティアが足止めされた。コロナ禍の拡大を警戒して外部からの人の移動を抑制したいのと、現地の混乱を避けたいとの意図があったと考えられている。
 「これでは声をあげない災害弱者を見逃し、助けの手が届かない」と考えたOBJは地元自治会に実情を聞き取り、その要請で伊豆山地区の在宅被災者支援を始めた。
被災地域は高齢化率48%、急こう配の坂が多い地区。高齢の在宅避難者を中心に250世帯を徒歩で回ると、雨のたびに不安を募らせる独居高齢者、老々介護の夫婦、引きこもりの男性など「助けの声が出せない住民」の実情が見えて来た。支援物資の受け取り代行やワクチン接種会場への送り迎え、日用品の買い物への同行支援を続けた。
 誰一人孤立させないために活動している災害被災者支援団体が存在することは、もっと認知されてよいはずだと思う。(2022年2月16日) 


高台の避難者宅に支援物資を届ける災害支援スタッフ
(熱海市伊豆山地区で、OBJ提供)